書くということ

以前私が『ママライター講座』に参加したときに、課題として提出したものを修正してUPします。

私が文章を書く練習をする、理由の一端。

 

 

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昔々、川のほとりにひどく信心深い男がおりました。

その年の冬は積雪が多く、川も珍しく凍り、長老たちは「前と同じだ。暖かくなったら洪水が起き、村は水浸しになっちまう」と、避難の準備を始めました。しかしその男は「こんなに神様を信じているのだ。神様がきっと助けてくださる」と、一向に動きませんでした。そうこうするうちに、川の水があふれ出し、村人は一斉に避難を始めました。もちろん男にも避難するように連絡がありました。しかし彼は「神様が助けてくれるから心配ないよ」と、避難しませんでした。

しばらくすると水は床上まで侵入してきました。そこへボートで避難する村の人が通りかかり、説得したのですが男は追い返してしまいました。家は完全に水につかり、男は屋根によじ登りました。そこへレスキュー隊が到着し、男を助けようとしましたが、男は「絶対に神様が助けてくれるから」と、救助を拒否し、結果、流されて死んでしまいました。

天国へ着いた男は、神様に詰め寄りました。「助けを待っていたのに!」と。

神様は残念そうな顔でこう答えました。「助けなら何度もやっただろう?」

 

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 この話は米原万里さんの『真夜中の太陽』という本に収録されている『安全神話』というお話です。育児に疲れていた私は、夜中に「神様 いい話」と検索して不思議ないい話を読みながら現実逃避して、ストレスを発散していました。その時に見つけたこの話は、私にとってなかなか衝撃的なお話で、ずっと頭の片隅にこびりついていました。

 

 人間の子育ては他の生き物と違い、教えてもらわなければできないことが多くあります。もちろん本能でわかる部分も多いのですが、おむつの替え方、母乳の与え方、寝かせ方、沐浴の仕方、おんぶの仕方、赤ちゃんの服の種類、子守歌も、教えてもらわなければわからないことだらけです。私も第一子出産後は全く何もできませんでした。母との仲が悪かった私が頼ったのはインターネットで、当時は今よりも必要な情報にたどり着くのが本当に大変でした。育児雑誌も参考にしましたが、ネットで見た先輩ママのアドバイスと内容が全く違う上に、先輩ママのアドバイスのほうが何倍も実践的でした。そして、それらを調べるのに寝る時間を削って、深夜まで携帯を握りしめていたものです。これからママになる人や、娘に、同じ思いをさせたくない。そういう思いで2011年からママの育児グループを作り、先輩ママや専門家との交流の機会をたくさん作ってきました。しかし、自らも子育てをしながらその活動を続けていくには、気力も体力も足りません。しかも完全に無償で、時に自費を費やしての活動に対し、夫からは「家事や子供との時間を犠牲にしてまでやることなのか」と、よく言われていました。とはいえ、交流会を行う意義は私が一番よく知っていますし、共感して活動を助けてくれる人も増えてきました。自然と活動が大きくなるにつれ、私は神様が助けてくれるのではないかと、どこかで望んでいたのです。

 そんな折、とある還暦を過ぎた男性とお会いしました。その方は地域の活動に熱心で、子供のことにも理解を示してくれました。そこで私は彼に頼ることにしました。しかし、どうにも思いが伝わりません。彼の理解は育児雑誌の内容で、私の求めていたのはネットに書き込まれた先輩ママのアドバイスだったのです。結局一緒に何かを行うことはありませんでした。彼には彼の思いがあり、私には私の思いがあり、人に自分の夢を叶えさせようなどと虫のいい話を考えたのがよくなかったと反省しました。私は神様を探して、無意識に長い間溺れていたのでした。

 ママライター塾に参加した理由は、「より良い未来のために、伝えなければいけないこと、やらなければいけないと思うことがあったら、行動できる人が現れるのを待っていないで先ずは自分から発信してみるべき」と、気付き始めたからです。そして、そのためには文章を書くことが必須であるということも。しかし、文章をまともに書いたことの無い私にとって、独学はとても難しいものでした。読まれるのも恥ずかしいですし、そもそも自信がありません。

 

講座の中で、「自分のインタビュー記事が全国紙に載ったときに、誰かの行動を変えるかもしれない、誰かの人生を変えたかもしれない」と仰っていたときに、文章の力を感じ、やっぱりこの講座を受講することは正解だったと確信しました。

『ママライター講座』は、私にとって神様が派遣したレスキュー隊だったわけです。

 

 たくさんのママたちの貴重な経験を、発信していきたいという願いに心から賛同します。是非私も参加させて下さい!宜しくお願い致します。

 

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形にするって、やっぱり大切。

さて、明日もがんばろう!